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もう一度、働く意味を取り戻せ~会社員が仕事の価値を問い直す「留職プログラム」 – 特定非営利活動法人クロスフィールズ 代表理事 小沼大地氏

Japan
教師になる前に社会を見ておこうと、青年海外協力隊でシリアに向かった小沼氏は、国を良くしたいと語る現地NPOのスタッフ、ビジネスの力で社会に貢献する人々との出会いに感銘を受ける。一方、日本では熱い想いを抱いた若者が志を失っていく現状を目の当たりにし、自らができることは何かと問い、事業を興した。

特定非営利活動法人クロスフィールズ  共同創業者・代表理事

2015.08.04

日本の会社員が、新興国で「社会貢献」

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事業内容について教えて下さい。

私たちクロスフィールズは「留職」プログラムを運営しているNPO法人です。留学ならぬ「留職」、これは私たちの造語なのですが、留学が海外で学業をするのに対して留職は海外で職務を遂行することを表しています。

このプログラムは、日本企業の社員を主にアジア新興国のNPOや社会課題に取り組む企業などに期間限定で派遣して、現地の課題に、その人のスキルを活かして取り組んでもらうという仕組みで、青年海外協力隊の企業版とも言えると思います。

私たちのクライアントである日本企業にとっては、一定期間社員を派遣することでグローバルに活躍できるリーダーを育てる、新興国で新たな事業創出の種を見つけるといったメリットがあります。

2011年に事業を立ち上げてから今までご導入いただいた企業は約25社、派遣人数は初年度が1人、2年目は8人、以降も20人、40人と倍くらいのペースで増えてきており、企業からのニーズも年々高まってきていると感じています。

どのような意図で事業を立ち上げたのですか?

今、これだけ世間や企業はグローバル化をうたっているのに対して、グローバルで活躍できるリーダーを育成する土壌が皮肉にも減っているという現実があります。

かつては若手社員を、「現地を見てこい」「新拠点を立ち上げろ」と送り込み、工場などで技術指導をさせてスーパーバイザーとして成長してもらうなど、新興国で若手の日本人社員が成長・活躍する仕組みが多数存在していました。しかし昨今のグローバル展開は、買収してローカルスタッフ中心に運営することが主流となってきています。そこに日本人社員を多数送り込むということはせず、管理職ポジションの社員をひとりやふたり送るだけです。

現在は、これまでの蓄積もあってさほど問題は顕在化していないように見えます。ただ10年後の管理職ポジションは誰が担うのでしょう。このままで人は本当に育っていくのでしょうか。グローバル展開を支える人を育てる仕組みの空洞化が起きているように私は感じています。

例えばMBA留学や語学研修などの座学も海外に出るきっかけとしてはいいでしょう。ただ私は日本人が現地社会のなかにどっぷりと浸かる実体験が極めて重要だと信じています。現地で、現地の人と、現地の課題やニーズを捉えるという作業は、一筋縄ではいかないことばかり。数ヶ月間という派遣期間で新興国ビジネスを肌感覚で学ぶ現地での体験は、個人を格段に成長させてくれます。

こういった事業理念にご賛同いただいた企業が私たちのクライアントとなってくださっています。

ビジネスの力で社会問題に取り組む

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具体的にはどのような流れで留職プログラムは進めているのですか?

まずは私たちのクライアントとなられる企業への営業活動です。ご導入いただくことになったら、派遣される人材を企業の方とともに選定するとともに、参加する社員の本業でのスキルに合った現地団体や現場の課題を選びます。その方のお仕事の来歴や専門分野などによってプログラムの内容は十人十色、フルオーダーメイドに近いですね。

ある大手医療機器メーカーで研究開発に携わる20代後半の男性は、ジャカルタで小さなクリニックを経営するNPOに派遣されました。現地では注射針の廃棄方法に問題があるという課題解決のために向かわれたのですが、そこで彼は使用済針を綿に刺してから廃棄するという方法を思いつき、その方法を実際に運用まで落とし込むために奔走されました。6つの診療所に足しげく通い、手順だけでなく、必要な背景・理由、各診療所に合った運用法にまで深く入り込み、2ヶ月の派遣期間で全ての運用が回るようにして帰国されました。

コストもかからない手軽な方法は、現地にいたからこそ生まれたアイデアだったと言えるでしょう。その方が帰国後にお話されていたことが印象的でした。「一本の針の価値を見直すきっかけになりました」。日頃、他メーカーとしのぎを削るように針を少しでも細く、と研究されている本当の価値を改めて知ることができたとおっしゃっていました。

確かに私たちクロスフィールズは日本からグローバルリーダーをたくさん送りだしたいという想いで留職プログラムを推進していますが、何より大事なのは、この留職プログラムを通じて参加された一人ひとりが自分の仕事の本当の価値を知る点にあります。

仕事や生活に追われていると日常に埋没してしまうということは、多かれ少なかれ誰にでもあると思います。しかし少し視点を引き上げて、自分が携わる仕事によって社会にとってどんな価値を与えられるのか、どのように人々の役に立つのか、これを改めて実体験と共に知ることで働く意欲を取り戻してほしいという強い想いがあります。

クロスフィールズには何人くらいスタッフがいらっしゃいますか?

現在、10人ほどのメンバーと共に活動しています。私と、共同創業者である松島由佳とのふたりで走り出した事業でしたが、多くの人々に支えられてここまで成長してきています。

メンバーの中には、条件の良い大手企業を退職してクロスフィールズに来てくれた仲間も多数います。彼らは「どこに所属するか」ではなく、「自分が社会にどのような価値を提供できるか」という軸で職を考えている大切な仲間です。正直なところ、人は周りに流されやすい生き物で、私自身もそうだと思っています。ただ、「自分が一番好きな自分でいられる仲間」と一緒にいることで、志を持ち続けて働けるのだと思います。

私たちの団体ミッションは「社会の未来と組織の未来を切り拓くリーダーを創ること」です。社会変革と、企業としての利益創出。ふたつの両輪を同時に回していけるような人材を創る点にこだわりをもち、ボランティアなどではなくビジネスを通じて人の成長を応援したいと思っています。

仕事を「志事」に。志をもって働く方がひとりでも増えていくことでイノベーションが起き、日本社会が少しずつ変わっていく。そんなお手伝いの一端を私たちが担いたいと考えています。

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