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「最高のユニクロ体験」をフィリピンにも届けたい – FAST RETAILING PHILIPPINES, INC. 久保田勝美氏が目指す、フィリピンNo.1アパレルブランドという野望

Phillipines
ファーストリテイリング・フィリピン法人で統括マネージャーを務める久保田氏は30年近くの海外ビジネス歴を持つ、いわばABROADERSの大先輩だ。中南米、北米、アジア、ロシアなど様々な国で拠点を立ち上げ、ビジネスを展開してきた経歴を持つ。現在はフィリピンにてユニクロのブランド浸透を図るべく、新たな挑戦をしている。

FAST RETAILING PHILIPPINES, INC.  Chief Operating Officer

2015.06.02
【前編】肩書きではなく、自分の人間性で勝負する- FAST RETAILING PHILIPPINES, INC. 久保田勝美氏が、ブラジル10年、アメリカ7年勤務を経て選んだ、フィリピンのユニクロでの挑戦

たった1時間で会社と自分を売り込む

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ファーストリテイリングに入られて、各国で次々に新拠点の立ち上げをされた。具体的にどのように動いたのですか?

いつも、新しい国に行くたびにゼロからのスタートです。どんな国か、どうやって会社設立するのか、商品の輸入はできるのか、小売業の出店や採用はどうやるのだろう……その国の人々とたくさんお会いして話を聞くことで、形が見えてきます。

ユニクロを見たことも聞いたこともない相手に、たった1時間のアポイントで当社や私のことを気に入ってもらわなければ、次はありません。その過程をどの国でも誠実に繰り返すうちに、「私はこういうプロセスが好きだったんだ」としみじみと気がつきました。ブラジルに初めて行ったときにつきつけられた「自分は何者か」という問いを、今も常につきつけられているように感じるのです。

自分個人だけではなく、ユニクロという会社にとっても同様です。「我々は何者で、何をしたい会社なのか」という意思を持って、それを短い時間で相手に理解していただかなくてはなりません。契約条件や値段という交渉事項は後からついてくるものです。私は元々営業畑の出身ですが、物を売るだけでなく、ファーストリテイリングの企業理念や価値観を売り込んでいくことに喜びを感じていて、小売業の仕事をしている今にも通じるものだと思っています。

様々な国での立ち上げを経験された後、現在はフィリピン専任でいらっしゃいますね。

入社してからの約6年、新規国で拠点を立ち上げたらまた次の国へ、というサイクルを繰り返してきました。次第にひとつの拠点を深堀りして長期的視点で事業を育てていきたいと思うようになり、当社会長の柳井にそのことを告げました。「あぁ、そうですか」という返答は、「お前にそれができるのか?」という意味でもありました。すぐには異動の願いは叶えられませんでした。

ベトナム、フィリピン、インド、インドネシアの拠点立ち上げも順に携わり、フィリピンに関してもこれから事業拡大をしていくぞという段階で、フィリピンの事業責任者になるよう会社から言われました。希望はしていたものの、通達された瞬間は5秒間だけたじろぎました(笑)。でもすぐに、このようなチャンスは他にない。海外事業をしたくてこの会社に入ったのだ、よしやるぞ!と思い、2012年4月現職に就き今に至ります。

フィリピン専任になられて3年近くが経ちました。どのような変化がありましたか?

全く何もないところからスタートをきって、今では20店舗超の出店を果たし、今後も店舗は増やしていきます。従業員も1000人を超えました。

以前、各国で立ち上げを担当していた頃は、私自身と周りのスタッフ数人がその国を好きになって情熱を持っていればそれで済みました。しかし今は自分以外の多くの関係者にフィリピンを好きになってもらわなくてはなりません。ここでの事業を支えてくれる日本本社や世界中の仲間どう巻き込むか、これがいかに重要かを実感しています。

フィリピンのユニクロではTシャツ1枚590ペソ、これは現地の人々が一日働いて得る給与と同じくらいの金額です。日本に置き換えればTシャツ1枚に8000円払う感覚でしょうか。現地で1枚190ペソで売られている物より品質も、商品が持つ価値もはるかに高いけれども、190ペソの商品に慣れた人々に当社の製品を欲しいと思っていただくにはどうしたらいいのか。これは既存の先進国店舗ではあまり直面することのなかった問題です。東京やNYのオフィスで考えるだけでは答えは導けません。この問題にフィリピン現地で向き合うことは、アジアで爆発的に増加している中間層に対して今後当社のビジネスをどう進めていくか、という答えにもつながるものだと思っています。

どれだけフィリピンが魅力溢れる国で素晴らしい国民性でも、世界のユニクロ全体にとってフィリピンで事業をすることの意味は何で、どんなメリットがあるのか……その視点を私は持ち続ける必要があると感じています。

フィリピンと日本のハイブリッド人材を育成する

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フィリピン人のスタッフはどのように教育されているのですか?

フィリピンの人々は基本ニコニコしていて、他人に対して自然に優しく接することのできる人々です。ハートウォーミングな人柄というのは、そもそも教えて作れるものではありません。そういう意味では小売業に適した国民性と言えると思います。しかし、仕事面ではアクションが遅い、精度が低い場合があることは否めません。

一方、日本人には「仕事の正確さ」「効率の高さ」「おもてなし」「美意識」という良い点があります。フィリピンと日本のそれぞれの良いところをミックスした人材育成をしたいと心がけています。

新商品が出たら一方的にその利点を伝えるのではなく、スタッフ同士で意見を交わして覚えてもらい、覚えたセールストークを使うことでお客様がその商品を買ってくださる。その姿を見て心底喜びを感じてもらう。この地道な成功体験の積み重ねによって、一人ひとりが自己成長を感じてもらえれば、売り場はもっと良くなります。

また、バックオフィスのメンバーにも「今週自分がした仕事で店舗は具体的にどう良くなったか、金曜の夕方に思い起こしてほしい」と考えを促しています。これが思い浮かばなければ、その仕事は間違っている。店舗に立たないスタッフにも現場感覚を持ってもらいたいと、度々要求しています。

日本や中国・韓国の歴史のある店舗に比べると、フィリピンの店舗はまだ遠く及ばないレベルです。売上や店舗数といった数字面の向上だけではなく、来店してくださったひとりでも多くのお客様に「うわぁ、これはユニクロらしいな」と感動体験をしていただけるよう、やらなければいけないことはまだたくさんあります。

今後の展望についてお聞かせください。

当社は2020年、世界No.1アパレルブランドになることを目指しています。それに伴い、フィリピンでもNo.1になっていたいという目標があります。

長年フィリピンの人々が愛着を持って育ててきたローカルブランドもある中で、この目標はたやすいことではないと覚悟しています。その為にはユニクロも、現地の人々に強い愛着を持ってもらわなくてはなりません。

また私個人としては、50歳を過ぎて「人の為になることをしたい」という想いが強まっています。フィリピンは資源も豊富とはいえず、工業でも他のASEAN諸国に比べると遅れをとっています。ただ人々の魅力はとても強い。人懐こく、コミュニケーション力も高く、これは大きな武器です。先ほども言ったように、フィリピン人の特性に、日本人の持つ利点を掛け合わせて、ここから世界で活躍できる人を輩出できたらいいなと思います。

私も気が付けば海外にいる期間が長くなっていましたが、はじめは「海外に出てやるぞ!」などという考えはありませんでした。たまたまブラジルへの扉を興味本位から開けて、「なんだか海外って面白いな」と思ったことで次が開けて、その繰り返しで今日に至ります。なにがなんでも海外で活躍するぞ、と気負わなくとも、まずは小さなことから始めれば意外に回るものです。あとは良き出逢い、ご縁が次の世界へと連れて行ってくれることと思います。

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